管理不全土地管理制度
所有者不明土地管理制度と並んで新たに成立した制度が「管理不全土地管理制度」(民264条の9)です。
管轄裁判所や管理人の善管注意義務対象は、所有者不明土地管理人の場合と同様ですが、発令対象となっている土地登記簿へは当該命令の登記はされません。
管理不全土地管理命令の申立てができる利害関係人とは、倒壊のおそれが生じている隣接地所有者や、ごみなどの不法投棄された土地を所有者が放置しており、臭気や害虫などの被害を受けている者、発令対象土地所有者の身辺整理を行っている親族などが挙げられます。
この制度の大きな特徴として、非訟事件手続法91条第3項により、管轄地方裁判所は、管理不全土地管理命令の対象とされた現存所有者から意見を聴取する必要があり、万一所有者が当該命令利用に反対している場合には、適切な管理という実効性が欠けるものとして、原則発令ができないことになります。
さらに、管理人の報酬額の決定についても、上記と同様に所有者の意見を聴取する必要があり、所有者不明土地管理制度とは対照的に、所有者が現存していることが前提の制度となっており、選任された管理人は、業務を遂行する上で当該所有者とのコミュニケーションが非常に重要となってきます。
この制度が活用される場面として、所有者が遠隔地に居住し、あるいは高齢・病気・身体的に障害を伴う等の理由で土地の継続的管理が困難な場合などが想定されます。注意すべき点は、当該制度は、審理手続・事務遂行中に所有者の意見を聴取する必要があることから、所有者は相当の意思能力を有していることが前提となります。